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前頭側頭型認知症とは?原因と症状

更新日:2024/01/16

記事監修

東京慈恵会医科大学 精神医学講座 教授
繁田 雅弘 先生

前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉と側頭葉が障害されることで発症する認知症です。性格の変化や社会性の欠如、同じことを繰り返すなどの症状がみられます。発症年齢が比較的若く、初期のうちはもの忘れも目立たないため、認知症以外の別の精神疾患と診断されてしまうことも少なくありません。

原因 ほとんどは70歳までに発病します

前頭側頭型認知症のほとんどは70歳までに発病します。65歳未満に発症する若年性認知症の原因としては血管性認知症、アルツハイマー型認知症に次ぐ3番目となっています。欧米では30~50%に遺伝が認められていますが、国内では遺伝による発病はほとんどありません。
これまでの研究で、脳の神経細胞にタウたんぱくやTDP-43と呼ばれるたんぱく質が蓄積することがわかっていますが、詳しいことについてはまだ解明されていません。

症状 ほかの認知症ではあまりみられない症状が現れます

前頭側頭型認知症では思考や理性、社会性などに関わる前頭葉と知識や記憶、感情などを司る側頭葉が障害され、ほかの認知症ではあまりみられないさまざまな症状が現れます。社会性が失われ、お店で万引きをする、赤信号を無視して道路を横断するなど、周囲の目や環境を気にしない自分本位の行動がみられるようになります。
毎日決まったコースを散歩したり、同じ時間に同じ行為をするといった常同行動も特徴的な症状です。
過食になったり、濃厚な味付けや甘い物を好むなどの食行動の変化、自分自身や周囲に対して無関心になる自発性の低下、感情が鈍り他人への共感や感情移入が難しくなることもあります。
一方で多くの認知症にみられるもの忘れなどの認知機能障害は、あまり目立ちません。

検査 頭部MRIやCTで前頭葉と側頭葉に萎縮がみられます

頭部MRI検査やCT検査では前頭葉と側頭葉に限局した萎縮がみられます。前頭葉のほうが萎縮が強い傾向があります。脳血流SPECT検査では前頭葉と側頭葉の前方に血流の低下が認められますが、ほかの認知症とは異なり頭頂葉と後頭葉は保たれます。

経過 初期にみられる行動異常は進行につれ目立たなくなります

初期のうちは、毎日同じ時間に同じ行為をすることにこだわったり、欲求を抑えられずに本能のままに行動することが増えてきます。身だしなみに気を遣わなくなる、礼儀に欠ける行動をとる、痴漢行為や万引きなど反社会的な行為もみられます。けれども、本人に悪いことをしているという自覚はまったくありません。それだけに制止をすると、興奮や暴力を招いてしまうこともよくあります。一方で、自分から何かをする意欲がなくなったり、受け応えがいいかげんになるなどの自発性の低下がみられることもあります。
しかし病気が進行するにつれ、意欲や活動性の低下が顕著になり、非常識な行動や暴力行為は逆に目立たなくなっていきます。同じ行為の繰り返しはみられるものの、気になる部分を指でなぞり続けるなど、単純な行動のみが残ります。
さらに病気が進むと、感情は失われ、言葉も発しなくなり、ベッドやふとんに横になったまま何もせずに1日を過ごすようになります。食べる意欲や筋力も低下し、やがて動くこともできなくなります。発症してから寝たきりになるまでの期間は6~8年とされています。

治療 症状がひどい場合は一時入院も選択肢に

症状を改善したり、進行を遅らせたりする薬はありません。基本的には生活環境の調整などを行っていくことになりますが、非常識な行動や暴力などがあまりにひどい場合は一時的な入院も選択肢となることがあります。

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