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認知症による意欲低下(1.軽度)への対応法

更新日:2021/12/09

記事監修

高知大学 医学部 神経精神科学教室 教授
數井 裕光 先生

認知症の方はかなり初期から意欲、自発性がなくなったようにみえることがあります。
社交的だった人が家に閉じこもりがちになったり、おしゃれだった人が身なりに気を遣わなくなったり、楽しんでいた趣味や好きだった活動に参加しなくなって、わけを尋ねると「面白くなくなったから」と答えることもあります。
これは、脳の神経細胞が減って、一生懸命脳を働かさなくては周りについていけなくなったことに原因があると思われます。

レビー小体型認知症の方では、

  • パーキンソン症状のせいで、身体が思うように動かせないこと
  • 幻視などがあり、不安に襲われることも加わって、あまり動きたくなくなるのだと思われます。

どの認知症の方も周囲の状況を理解して失敗しないように行動するために、多大なエネルギーを使います。
その結果非常に疲れやすく、またとても「楽しめる」気分にはなれないのです。

対応法

ただやみくもに活気づけようとしても解決にはなりません。
しかし、日中の活動が低下すると、不眠や昼夜逆転の原因になったり、認知機能が一層低下したり、運動機能が衰えて寝たきりになったりする危険があります。身体的に異常がないことを確認したうえで、活動性を高めるように働きかけましょう。

無理なく楽しめる活動を

ご本人が無理をしなくても、楽しめたり、役割を果たせたりすることに誘いましょう。
これまでにしたことがないことを新たに覚えるのは難しいですから、以前から親しんでいることで、周りのちょっとした促しや手助けがあれば続けられるものはないか探してみてください。

初めは少しずつ

初めから欲張らず、ご本人のペースに合わせて、無理のないものから徐々に活動を増やしていきましょう。
「少しずつ1日に何回も・・・」というやり方が有効です。

日課表を作る

認知症の方は、変化に対応する能力が低下しますから、ご本人の生活をパターン化してあげることはよいことです。規則正しい生活をするための日課表を作るのもよい方法です。
新しい活動も、最初はしぶしぶという感じですが、繰り返し誘ううちに徐々に容易に行動に移せるようになります。
さらに行動が活発になった時点で、ご本人と相談して日課表を作り、それに沿って働きかけると、促されなくてもご自分から活動されるようになるでしょう。

いろいろな誘い方をしてみる

一度の誘いだけではうまくいかなくても、繰り返し誘い続けることは大切です。
また、ただ誘うだけではなく、一緒に行動することも必要です。
「おいしいお菓子があります」「お茶を入れました」など、食べ物をきっかけに働きかけるのもよいでしょう。

人を替えてみる

誘う人を替えてみると案外すんなり受け入れていただけることがあります。

介護保険のサービスの利用を

介護保険のサービスを利用してデイケアなどでレクリエーション療法などに参加することは有効です。
初めは戸惑われたり嫌がられたりするかもしれませんが、規則正しく外出して人と交わることはよいほうに作用します。
また、こうした施設のスタッフは認知症のことをよく知っている専門家ですから、家族の方によるケアとは違った立場からご本人を支えてくれるはずです。

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