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認知症によるせん妄への対応法

更新日:2021/12/09

記事監修

高知大学 医学部 神経精神科学教室 教授
數井 裕光 先生

ある時急に落ち着きがなくなる、つじつまの合わないことを言う、興奮する、家族の顔がわからなくなる、幻を見る、荷物をばらまく、裸になってうろうろするなどの症状を示して、周りの方をびっくりさせることがあります。これをせん妄といいます。
せん妄が夜間に出現する場合、特に「夜間せん妄」と呼んでいます。
夜間せん妄の場合は、昼間になれば症状は落ち着きます。感染や発熱などが原因の場合、その原因が取り除かれれば軽減します。
アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症の症状の一つとして現れることもありますが、感染、発熱、脱水、薬物の副作用などが誘因となることも多く注意が必要です。
一般の高齢者でも手術後などに、せん妄が現れることがありますが、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症の方の場合、身体や心の不調がすぐに症状となって現れがちだといわれています。

対応法

あわてず落ち着きましょう

初めてこのような症状に接すると、びっくりされるに違いありませんが、まず周りの方が落ち着くことが重要です。

無理に制止しない

言動や行動を無理に止めようとすると、ますます興奮して暴言や暴力に及ぶ場合があるので、焦らず様子を観察しましょう。

優しい話しかけを

不安や恐怖、困惑の強い時はご本人を一人にしないようにつきそい、優しく話しかけます。
名前を呼びかけ、介護している方の名前を知らせ、そばについているから安心するよう伝えます。また場所や時間を教えるようにします。
ご本人に落ち着いてもらい、安心してもらうことが大切です。

ご本人の話をよく聞いて

どうしてそのような行動をしているのか、ご本人の話をよく聞いてみてください。
不安や恐怖を一番感じているのはご本人自身です。
おかしいと思っても否定せずに「これで困っているのですね」「このことを怒っているのですか?」と相槌を打ってください。ご自分の気持ちをわかってもらえたと思うと安心されます。
せん妄は症状の変動が激しいので、食事や水分の摂取、トイレの誘導など必要な援助は、症状の軽い時にタイミングよく行いましょう。

静かで安全な環境を

刺激的な音や光は避けて、静かな環境のなかで過ごせるようにします。
身のまわりの危険なものは片づけ、安全な環境にします。

医師に相談を

正しく治療し、原因を取り除けば症状は軽減します。
明らかに「せん妄」とご家族ではわからくても、ここ数日で急に認知症が進んだように思われる時は、医師に相談しましょう。

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