15分湯船に浸かるだけで質がアップ?短時間でも「良い睡眠」を取る方法

本当はもっと沢山睡眠時間を確保したいけれど、忙しくて眠る時間が取れない……。

そんな悩みを抱えている人は、多いのではないでしょうか。短時間でも質の良い睡眠を取るための方法を知っていれば、次の日もがんばれそうですよね。
そこで今回、快眠セラピストの三橋美穂さんに、短時間しか眠れない時にやっておくと良い“睡眠の質を高めるコツ”について伺いました。

働き盛りなら7〜8時間は必要? 自分の適正な睡眠時間をチェックして

はじめに、短時間しか眠れないとどんな影響があるのか教えてください。

まず、必要な睡眠時間は個人によって異なります。世の中には、5時間未満の睡眠でも平気なショートスリーパーもいますが、人口の0.5%程度と言われています。ほとんどの人は5時間の睡眠では足りないでしょう。ショートスリーパーでない方が短時間睡眠をすると、睡眠負債が溜まり日中眠気に襲われるだけでなく、続けると体がダメージを受けます。

週末にたくさん寝たり、平日の空き時間に昼寝したりすれば、睡眠負債は返済できるのでしょうか?

例えば、睡眠が7時間必要な人が、1日〜2日ほど6時間睡眠になってしまった場合は、週末にその分寝たり、昼寝をしたりすることで睡眠負債は返済できます。しかし、それ以上の睡眠不足が続くと、余分に寝たとしても負債は返済しきれないでしょう。

必要な睡眠が取れていないと、体力が回復しないだけでなく、細胞が死滅し寿命を縮めたり、認知症の発症リスクを高めたりすることも。若い頃の睡眠習慣って、実はすごく大事なんです。

睡眠負債の返済に限度があるとは……。けれど、短時間睡眠でも深い眠り(ノンレム睡眠)がしっかり取れていれば大丈夫では?

確かに体の疲れを回復して、成長ホルモンを分泌する深いノンレム睡眠は大切ですが、浅い眠りであるレム睡眠も大切。レム睡眠には記憶の整理をしたり、心の疲れを回復させる役割があります。また、睡眠時間が短すぎると、分泌された成長ホルモンを全身に十分行き渡らせることができません。

また、一般的に「良い睡眠」とは寝つきが良く(10〜20分で入眠できる)、適度な睡眠時間が取れていて、睡眠の長さ(量)と深さ(質)が取れていることを指します。短時間では睡眠の量が確保できないので良い睡眠とは言えず、続けてしまうと先ほど紹介したような健康のリスクを負うことになるでしょう。

まずは自分にとって適正な睡眠時間を知ってきちんと眠ったほうが良い、と。

できることなら、そうしてほしいですね。一般的に働き盛りの人の多くは7〜8時間の睡眠が必要だと言われています。

自分に必要な睡眠時間を知っておきたいのであれば、1週間ごとに睡眠時間を変えてみてください。1週目は8時間睡眠を続け、次の週は7時間半、またその次の週は7時間というように30分ずつ睡眠時間を変えてみると良いでしょう。このとき起床時間は一定にし、就寝時間を30分ずつずらしてください。

昼間の体調や気分を観察することで、自分にとっての適正な睡眠時間がわかるはずです。

短時間でも良い睡眠を取る方法

短時間睡眠はできるだけ避けるべきとのことですが、もし短時間しか眠れない場合に睡眠の質を高める方法はあるのでしょうか?

少しでも良い睡眠を取るために、意識してほしいことが5つあります。

(1)お酒、タバコ、カフェイン
睡眠の質を下げてしまうお酒やタバコ、カフェインを夜に摂取するのは控えてください。カフェインは寝る6時間前まで、1日の摂取量も減らすようにしましょう。

(2)夕食
夕飯は少量にして、消化の悪いものは避け、食物繊維の多い野菜を中心にすると良いでしょう。食物繊維は血糖値を安定させる作用があり、質の高い睡眠へと導きます。また、体温が上がって、その後下がるタイミングで眠りに落ちるので、体を温めてくれるような鍋料理や、ショウガやトウガラシを使ったメニューがおすすめです。

(3)入浴
忙しいと時間が惜しいかもしれませんが、入浴をシャワーだけで済ませるのではなく、5分でも湯船に浸かると眠りの質は高まります。おすすめは寝る1〜2時間前に、15分ほど湯船に浸かること。

(4)部屋の明かり
照明の照度を下げることも、眠りの質を高めます。夕日のような暖色の明かりを見ると眠たくなるので、夜は蛍光灯ではなく暖色系の明かりに切り替え、できるだけ暗くするのがおすすめです。

寝るときは寝室の明かりを全て消しましょう。豆電球のわずかな明かりであっても、睡眠の質を左右するため消すのが望ましいです。窓の外の明かりが気になる場合は、遮光カーテンを使ってみましょう。朝日もちょうどよく入ってくる2級か3級の遮光カーテンがおすすめです。

(5)ストレッチ
就寝前にストレッチをするのもいいですね。胸を広げて肋骨の隙間を開くようなストレッチをすれば、血の巡りがよくなり、睡眠中の呼吸も深くなって、結果疲れも取れやすくなります。ストレッチが難しい場合も、寝る時に深呼吸をすると同じような作用が期待できますよ。

目覚まし時計は立ち上がらなければ届かない場所に置く

短時間しか眠れない時って、特に起きるのが大変だと思うのですが、気持ちよく目覚める方法はありますか?

目覚まし時計を、立ち上がらなければ止められない位置に置くことですね。背中や太ももの大きな筋肉に力が入ると、交感神経が働いて目覚めやすくなります。スマホのアラームを使っている場合、立ち上がらないと届かない場所にスマホを置いておけば、睡眠の質を低下させる寝る前のスマホいじりも防げますよ。

起き上がったら、カーテンを開けて朝日を浴びましょう。太陽の光を浴びることで、体内時計がリセットされて、体が目覚めます。ベランダや外に出るのが一番ですが、難しければ窓際1メートル付近に15分〜30分いるといいでしょう。おすすめは、日当たりの良い窓際で朝食を取ること。起床後の体操やストレッチも体を目覚めさせるのに有効ですよ。

良い眠りを得て、短時間睡眠でも心地よい一日を

生活習慣をひと工夫するだけで、短時間でも質の高い睡眠を取ることはできます。そしてこれらの工夫は、短時間睡眠に限らず、日頃の睡眠にも応用できるはず。

もちろん質の高い睡眠ができるからと言って、短時間睡眠を続けることはおすすめしません。脳機能の低下や病気になるリスクを上昇させてしまう恐れがあります。このことを理解した上で、どうしても短時間しか眠れない時は、紹介した方法を試してみてはいかがでしょうか。

〜快眠セラピスト・三橋美穂さんプロフィール〜

著者

三橋美穂さん

快眠セラピスト。寝具メーカーの研究開発部長を経て独立。これまでに1万人以上の眠りの悩みを解決してきた。とくに枕に関しては、頭を触っただけで、その人に合う枕を見極められるほど精通。全国での講演や執筆活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュース、ホテルの客室コーディネートなども手がける。主な著書に『眠トレ!ぐっすり眠ってすっきり目覚める66の新習慣』(三笠書房)ほか多数。
https://sleepeace.com/

取材・文:中森りほ 編集:ノオト 撮影:宗形裕子 モデル:大黒まりこ

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