将来の生活や財産・相続について考える

更新日:2021/12/08

記事監修

新宿ヒロクリニック 院長
英 裕雄 先生

中外合同法律事務所
赤羽根 秀宜 先生

将来の生活や財産・相続について考える
〜「自分らしく」、生活と思いを実現するために〜

認知症になる前に考えておいたあなたの希望や想いを実現するために、また、悪徳商法などで財産侵害を受けたりすることがないように、元気なうちから準備しておけるソナエがあります。
判断が難しくなったときに、あなたの希望を尊重しながら契約行為を代わって行ってくれる「成年後見制度」、大切な財産を希望通りに残す「遺言」、もしものときの費用の準備や将来的な財産相続のスムーズな実施に役立つ「信託」について知っておきましょう。

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「藪入り」その後 老後と子どもたちのためのソナエ

子どもや家族に負担をかけない介護費用や生活費用の準備について(約4分)

遺言

法的な知識が不可欠。法律の専門家に相談を

自分の死後に自分の財産を誰に対し、どのように分配するかなどを記載する「遺言」。相続時のトラブルを避けるソナエの一つです。ですが、実は遺言に法的な効力を持たせるには多くのハードルがあります。法律の専門家に相談して作成するなど、自分の意思をしっかり反映できるよう準備しておきましょう。

遺言に法的効力を持たせる条件

遺言に法的効力を持たせるには、法律に従った遺言(書面)を作成しなければなりません。また、法的効力が生ずる内容は、法律に定められた事項のみです。法定事項以外に関する記載は残念ながら法的効力を持たないため注意が必要です。

 
遺言に記載して法的な効力を持つもの
 
      
  • 遺産相続に関すること
  •   
  • 遺産分割方法の指定または指定の委託
  •   
  • 相続財産の処分(遺贈)に関すること
  •   
  • 内縁の妻と子に関すること
  •   
  • 遺言の執行に関すること
  •   
  • その他、遺産分割の禁止、遺留分減殺方法の指定など
  •   

一般的な遺言書の種類と失敗例

 
  
自筆証書遺言
  
遺言者の死後、家庭裁判所に持参し、その遺言書の状態などを確認する手続き(検認)が必要です。自分で手軽に作成できるメリットがありますが、法的な不備のために無効になる、発見されない、破棄、隠匿、改ざんなどのリスクもあります。
  
公正証書遺言
  
遺言者が、公証人の面前で、遺言の内容を口授し、公証人が公正証書遺言として作成します。公証人の確認済みのため、検認の手続きはありません。公証役場に保管するため安全、確実ですが費用がかかるのがネックです。
 
     
  • 失敗例:パソコンで書いてしまった

⇒自筆である必要があります
ただし、財産目録については、要件を満たせば、パソコンなど自筆以外の方法でも認められます

     
  • 失敗例:作成日を入れなかった

⇒作成日時を特定できる必要があります

     
  • 失敗例:夫婦で一枚に遺言書をまとめた

⇒遺言は1人1枚に作成する必要があります

     
  • 失敗例:書き間違えて不明確な内容になった

⇒不明瞭な内容は認められません
⇒修正方法にもルールがあります

信託

もしものときの生活費や将来的な財産相続をスムーズに

信託とは、財産を持っている人(委託者)が信頼できる人(受託者)に対して、金銭や土地などの財産を移転し、受託者が委託者の定めた信託目的にしたがい財産の管理・処分などをする制度です。成年後見制度の利用や遺言の執行には時間がかかるため、後見人や子どもが当面の費用の工面が大変になることもあります。信託制度を活用し、財産移転の事務をスムーズにする方法があります。

家族信託

自分(委託者、受益者)と子ども(受託者)の信託契約、信託財産、管理・処分権限、財産給付・分配

子どもなどに資産の管理・処分を信託することで、元気なうちは、信託目的にしたがい、自分の老後の生活・介護等に必要な一定額の資金を毎月振り込むこととし、本人が亡くなったあとは、子どもがすぐに財産管理・処分を行えるしくみにしておくこともできます。

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